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朝日 2022/02/06
「サイバー警察局」を新設する警察庁の組織改編案
インターネットの普及と技術の進歩によって、サイバー犯罪は巧妙・複雑さを増している。そこに国境の壁はなく、日本を標的にした攻撃も相次ぐ。
こうした情勢を受け、政府は先ごろ警察法改正案を閣議決定し、国会に提出した。この4月、警察庁に「サイバー警察局」を新設し、直轄の特別捜査隊も発足させる。
国が前面に出ることで国際協力を進めようという目的は理解できる。だが都道府県警察を指導・監督する立場を超えて、警察庁が自ら捜索や逮捕などの権限をもつのは、従来の警察行政からの大きな転換だ。
その行使にゆきすぎがないよう、組織の内外でどうやってチェック機能を働かせるのか。政府は国会で丁寧に説明し、国民の理解を得る必要がある。
当局が前のめりになった時の危うさを示す実例がある。
サイト閲覧者のパソコン機能を無断で使うプログラムを導入・稼働させたとして警察が摘発した事件について、最高裁は先月、その影響は軽微で「社会的に許容される」と述べて無罪を言い渡した。新しい技術にいかなる姿勢で臨み、どこまで踏み込むか、捜査当局に重い課題を残す裁判となった。
改正案は、警察庁が捜査する対象を「重大サイバー事案」と名づけ、(1)国や自治体の重要な情報管理やインフラに重大な支障が生じる(2)対処に高度な技術を要する(3)外国からの不正な活動に関与する――ものと定義。捜査は「必要な限度で行う」とし、苦情があれば国家公安委員会に申し出ることができるとの規定を設けた。
具体的にどんな行為が3類型にあたるのか。国会には内容を明確にする審議を求めたい。
苦情申し出制度は都道府県警察を管理する各公安委員会にあるが、認知度は高いといえず、運用実態も判然としない。どこまで有効な仕組みなのかも審議の中で確認する必要がある。
どの捜査もそうだがサイバー領域においても、当局は治安維持と人権保障の両立に心を砕かなければならない。
留意すべき点は他にもある。
サイバー攻撃は海外発のものが多く、刑事責任の追及は容易ではない。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が攻撃された事件をめぐり、昨年、警察庁や外務省が中国軍側の関与をほのめかす異例の発表をし、中国政府は強く反発した。
相手国を名指しして牽制(けんせい)する方法は、安全保障策の一環として欧米を中心に広がる。ただし場合によっては、国家間の深刻な摩擦や亀裂の種になりかねない。政府全体での入念な検討・調整と慎重な判断が不可欠だ。
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