毎日新聞 2021/12/28

 2016年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)など約200の国内機関が狙われたサイバー攻撃を巡り、警視庁公安部は28日、架空の日本企業の社員を装って日本製のセキュリティーソフトを購入しようとしたとして、詐欺未遂容疑で中国籍の元留学生、王建彬(おうけんひん)容疑者(36)の逮捕状を取ったと発表した。元留学生は既に帰国していて逮捕は困難とみられるが、公安部は国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際手配する方針。

 公安部によると、元留学生は16年11月、架空の日本企業の中国人社員を装い、東京都内の会社が販売していた日本製セキュリティーソフトを購入しようとした疑いが持たれている。元留学生が所属するとしていた企業の法人登記をソフトの販売会社側が確認したところ、実在しないことが判明し、実際には販売されなかった。
 16年6~12月にJAXAなどが狙われたサイバー攻撃は中国人民解放軍が関与したとされ、軍関係者の指示で元留学生がソフトを購入して脆弱(ぜいじゃく)性を把握しようとした可能性がある。元留学生は、攻撃で使われたレンタルサーバーの利用契約を偽名で結んだ疑いも持たれている。
 公安部のこれまでの捜査で、攻撃に関与したとされる中国のハッカー集団「Tick(ティック)」と、中国人民解放軍でサイバー攻撃を担う「戦略支援部隊」の下部組織「61419部隊」はほぼ一体とみられることが判明。元留学生は帰国前の公安部の任意の調べに、61419部隊所属の軍人の妻からネット交流サービス(SNS)やメールで「祖国に貢献しろ」などと求められ、日本製セキュリティーソフトの購入やサーバー契約などを指示されたことを明かしていた。
 このサイバー攻撃を巡っては、公安部が今年4月、攻撃で使われた別のレンタルサーバーを偽名で契約したとして、既に帰国していた中国共産党員の30代男性を私電磁的記録不正作出・同供用容疑で書類送検。10月に不起訴処分(起訴猶予)となっていた。

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