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日経新聞 2021.11.21
政府はミサイルや艦船などの防衛装備品を巡り、国が調達先を契約後に審査する新たな仕組みを検討する。装備品に組み込む部品や企業が扱う機器から機密情報が漏れないよう、信頼性を厳格に調べる。経済安全保障の観点から懸念がある中国製機器の使用を防ぎ、国産装備や米国などとの共同開発の基盤も強化する。
防衛省は航空機、弾薬といった装備品の調達先に自衛隊が求める用途などの重要情報を渡す。装備品に組み込む部品や通信機器などを通じてこれらが漏れれば海外に装備の弱点や作戦情報が伝わる事態も起きうる。
サイバー攻撃などのリスクも高まっている。戦闘機などを共同開発する米国からも対策強化の必要性が繰り返し指摘されていた。政府機関については19年度から安保上のリスクがある通信機器を全省庁で調達しない方針をとっている。
新法に基づく審査は防衛省の担当者が担う。契約が決まった社を対象に使用する部品や、パソコンなどインターネットにつながる通信回線や端末が適切かどうかを調べる。現在は企業側の自主的な管理に委ねているのを改める。
具体的には企業が製造用に設備を導入する際に事前の許可を得るようにする案がある。導入済みの設備についても、どの国の企業の製品が使われているかなど情報流出の危険性を点検する。社員が業務外で使う私用の携帯電話などは対象にしない。
情報漏洩やサイバー攻撃の危険があると判断すれば、国が該当する製品の計画変更を要請する。従わなければ契約解除の可能性もある。法案提出までに詳細な判断基準を詰める。
装備の調達を巡っては、すでに入札に参加する企業に資本関係や機密情報を扱う担当者の経歴と国籍の報告を義務付けている。留学経験など海外機関との関係の開示も求めている。
これらの資本や人の制約だけでは不十分だとみて、製造工程で組み込む部品や企業の設備についても国が確かめる仕組みが必要だと判断した。
日本は米欧各国との防衛装備品の共同開発を広げる方針で、情報保護は協力の前提になる。新型ミサイルや次期戦闘機など国産装備の開発需要も多くなっている。重工大手は「対策が強化されても対応できるよう心づもりはしている」と説明する。
近年は国内の防衛産業に関わる企業を標的にしたサイバー攻撃が相次ぐ。20年以降に三菱電機やNECなどの防衛省と取引のある企業が攻撃を受けていたことが明らかになった。中国経由で不正アクセスがあった可能性が指摘されている。
米国は国防総省が調達先の企業が順守しなければならないセキュリティー規約を設ける。開発に携わる研究者らの国籍や経歴などだけでなく、製造工程の通信環境といったサプライチェーンも調査対象にしている。
米欧の主要国は機密に関わる技術を取り扱える資格制度「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」も取り入れる。防衛産業に関与できる人材を制限する体制づくりで先行する。
日本にも同制度の導入を求める声はあるが民間人への適用に慎重論は根強い。
政府は22年の通常国会に日本の技術が軍事転用されるリスクなどに備える「経済安保推進法案」の提出も予定している。技術を巡る特許の公開制限やサプライチェーンの強靱(きょうじん)化支援など4項目が柱になる。 |