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読売新聞 2021.11.22
政府は、小型衛星による観測網の構築に向け、2020年代半ばに衛星3基を打ち上げ、実証試験を行う方針を固めた。災害状況の把握や海洋監視への活用が期待され、将来的には中国やロシアが開発を進める「極超音速滑空兵器(HGV)」などの探知・追尾も視野に入れている。
複数の政府関係者が明らかにした。岸田首相は、宇宙など先端科学技術の研究開発に大胆な投資を行う方針を示している。19日に決定した経済対策では、経済安全保障の強化に向け、5000億円規模の基金創設を打ち出した。3基の打ち上げ費用約600億円は、基金から捻出する方向だ。
小型衛星による観測網は、「衛星コンステレーション(星座)」と呼ばれる。小型衛星は1基の重さが100~500キロ・グラム程度で、高度400キロ・メートル前後の低高度周回軌道に打ち上げる。センサーやカメラなどを搭載し、地上や海上などの情報を収集する。
多数を連動させることで、従来よりも情報収集力が向上し、30基以上打ち上げれば、数時間以内に世界のどの場所でも撮影したり、観測したりできる。情報収集衛星など、従来の衛星より1基当たりのコストが安く、民間企業も開発を活発化させている。
実証試験では、衛星間の通信や情報処理が機能するかどうかを確認する。試験の状況なども踏まえ、さらに基数を増やす計画だ。政府は、観測網の構築で植生分布や火山や地震など自然災害の状況把握のほか、海上の不審船の監視に役立てる考えだ。
安全保障面では、HGV監視への活用が見込まれている。HGVは音速の5倍以上で低空を変則的な軌道で飛行する。放物線を描いて軌道が予想しやすい通常の弾道ミサイルと異なり、大気圏内をはうように動くため、地上のレーダーでは探知や追尾が難しく、迎撃がより困難だ。衛星の観測網であれば、宇宙からHGVの動きを捉えることができるとされる。
ただ、全世界をカバーする観測網の構築には巨額の費用がかかる。日本政府は米国が整備を進める観測網への参加や、民間衛星との連携も検討している。
◆極超音速滑空兵器=Hypersonic Glide Vehicle。弾道ミサイルから発射され、大気圏突入後にマッハ5以上で滑空飛行し、目標に到達する。中国はHGVを搭載可能な中距離弾道ミサイル「東風(DF)17」を実戦配備しているとみられ、8月に関連する実験を行ったとされる。 |