産経新聞 /22(火) 

   防衛省が来年度末、サイバー防衛でトップガンと呼ばれるような高度な技術を持つ隊員を養成する教育専門部隊を自衛隊に新設することが22日、分かった。巧妙化するサイバー攻撃に対処するための実戦的な教育訓練を行い、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング=職場内訓練)という能力開発手法も導入して優れた技量の人材の早期養成を目指す。来年度予算概算要求に関連経費を計上する。

サイバー防衛部隊の新編
サイバー防衛部隊の新編

■教育部隊、年間数十人を想定

  コンピューターやネットワークで構築されたサイバー空間は、従来の陸海空を超えた戦闘領域に位置付けられる。攻撃により指揮統制システムの混乱や装備の誤作動を招く恐れがある。

サイバー防衛の教育専門部隊は陸海空3自衛隊の共同の部隊として発足させ、年間に数十人の隊員に教育を行うことを想定している。部隊は陸上自衛隊久里浜(くりはま)駐屯地(神奈川県横須賀市)に置く。

久里浜駐屯地にある陸自通信学校には昨年度、3自衛隊のサイバー共通課程を設置している。同課程がサイバーセキュリティーの知識を習得させる座学が中心なのに対し、新設する教育専門部隊はそれ以上のレベルの隊員養成で、サイバー攻撃対処の運用に特化した実技を体得させる戦技教育であるのが特徴だ。

教育訓練では実際に運用している情報収集装置を使う。サイバー空間を活用した防衛省・自衛隊の情報通信ネットワークに対するサイバー攻撃の兆候を早期に察知し、攻撃手段の特定や防護、被害の未然防止に資する情報収集と分析の技量を身につけさせる。

防御態勢を検証するため攻撃者の手法で実際にネットワークやシステムに侵入できるかテストをする技術も学ばせる。その技術は、一昨年に改定した防衛計画の大綱が有事で相手のサイバー空間利用を「妨げる能力」の保有を打ち出したことを踏まえ、妨害のため相手の弱点を突く作戦にも生かす。

「早期養成には最高レベルの技術者の情報収集と分析の手法を体得させることが有効」(自衛隊幹部)なため、国内で民間に10人ほどしかいないとされ、トップガンと呼ばれる超一流技術者らに教育訓練の一部を委嘱することも視野に入れている。対処法を示した上で隊員に実践させ、改善点を指導するOJTにより短期間で能力を向上させる。

■部隊新編 2年前倒し、質量とも底上げ急ぐ

  防衛省がサイバー防衛で自衛隊に教育専門部隊を新設するのはサイバー防衛部隊新編の一環だ。部隊新編は令和5年度末を予定していたが、2年前倒しして来年度末に行うことが分かった。質量ともに部隊の底上げを急ぎ、自衛隊の活動の基盤である情報通信ネットワークの守りを固める。

島侵攻での電子戦のイメージ
島侵攻での電子戦のイメージ

  サイバーは宇宙、電磁波と並ぶ防衛の新たな領域で、一昨年に策定した平成31(令和元)年度から令和5年度までの中期防衛力整備計画は「サイバー防衛部隊1個隊を新編」「専門教育課程の拡充」との方針を明記しており、来年度末に実現する。部隊新編は「サイバー防衛全体の構えとしてマンパワーの見劣りを早急に是正すべきだ」(政府高官)との指摘が多く、計画を前倒しした。

  現行の態勢は、中核部隊として今年度末に290人に増員するサイバー防衛隊を自衛隊指揮通信システム隊の傘下に置き、傘下にはほかに110人の隊員がいる。部隊新編ではこの計400人の指揮通信システム隊全体を「自衛隊サイバー防衛隊」(仮称)に衣替えしてサイバー攻撃対処を効率化させ、新設する教育専門部隊も組み込むことが柱となる。

  陸海空3自衛隊にはそれぞれの情報通信ネットワークの監視と防護を担うサイバー関連部隊もあり、隊員は計370人。現行400人の新たな自衛隊サイバー防衛隊とともに増強し、5年度末までにすべて合わせて千数百人に拡大する。

  中国のサイバー攻撃部隊は桁違いの3万人、北朝鮮のサイバー部隊が6800人、ロシアが千人と指摘され、規模ではロシアと肩を並べる。(半沢尚久)[su_divider]
[su_accordion][su_spoiler title=”関連情報:電子戦部隊、東京に司令部 部隊新設も 防衛省、中露に対抗  /   産経新聞 2020.9.20″ open=”no” style=”default” icon=”plus” anchor=”” anchor_in_url=”no” class=””]

防衛省が電磁波を使う電子戦専門部隊を来年度末に陸上自衛隊朝霞駐屯地(東京都練馬区)へ新設する方針を固め、来年度予算概算要求に関連経費を計上することが20日、分かった。北海道と熊本県に続く専門部隊で、全国3カ所を拠点に電子戦で先行する中国とロシアに対抗する態勢を敷く。朝霞には3部隊を統括する司令部機能も新設し、陸自の全国の部隊を指揮する陸上総隊の傘下に置く方針だ。

電子戦
電子戦

軍事作戦では、通信機器やレーダー、ミサイル誘導に電波や赤外線などの電磁波が使用される。電子戦は、相手の電磁波利用を妨害し、自国の電磁波利用を防護するものだ。

具体的な作戦としては普段から相手の通信やレーダーで使用される電磁波の周波数を把握。有事には同じ周波数の電磁波を発射して混信を起こさせ、複数の部隊が連携するための通信をできなくさせる。動向を把握するためのレーダーも機能しないようにし、部隊の耳と目を不能にする。

陸自には電子戦部隊として第1電子隊が東千歳駐屯地(北海道)にあり、今年度末には健軍(けんぐん)駐屯地(熊本県)に80人規模で部隊を発足させる。朝霞に新設する部隊も健軍と同じ規模を想定している。

電磁波のうち地球の裏側まで伝わり、長距離通信に適している短波(HF)は現在、日本のどこからでも中国とロシアの全域で両国軍が使用する通信の状況が把握できる。日本周辺に展開してくる艦艇と本国の司令部などとのHF通信を確認することも可能だ。

電磁波は複数の拠点で収集することで電磁波を発する相手の部隊や装備の位置を詳細に特定できる。相手が移動している場合は移動方向も確認しやすくなる。陸自が専門部隊の拠点を増やすのはそのためだ。

個々の艦艇や航空機ごとに通信などで発する電磁波には指紋のような特徴がある。こうした電磁波の特徴を普段から収集し、相手の動向把握や作戦形態の分析に生かし、有事には効果的に妨害電磁波を発射して通信機能などを無力化する。

収集と分析を重ねた電磁波の特性を蓄積しデータベースも構築する。有事にどの周波数を使って相手の通信やレーダーを妨害するか備えておくためで、電子戦部隊の司令部機能がそうした役割を担う。

■電子戦

(1)相手の通信機器やレーダーに強い電磁波を当てて機能を妨げる電子攻撃(2)電磁波の周波数変更や出力増加で相手の電子攻撃を無効化する電子防護(3)攻撃と防護のため相手の使用電磁波を把握する電子戦支援-

がある。2014年から続くウクライナへの軍事介入でロシア軍は電子戦とサイバー戦を一体化させた作戦を展開。中国軍も電子戦の能力強化を重視している

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