毎日新聞 2021/2/1

  自衛隊が培ってきた災害救援や衛生といったノウハウを途上国の軍隊に伝える「能力構築支援事業」。新型コロナウイルスの感染拡大で人の往来が制限され、ほぼ途絶えていたが、2月に入ってオンラインで再開した。ただし施設の見学や実習はオンラインになじみにくく、本格的な再開はまだ先のようだ。

 この支援事業は、東南アジア各国軍の人材育成を後押しするとともに、日本との連携強化を図る目的で2012年に始まった。中国をけん制する思惑もあるとみられる。近年はカザフスタンなど中央アジアの国にも広げている。

 20年1~3月は、インドネシアやベトナム、東ティモールなど6カ国と東南アジア諸国連合(ASEAN)に対し計11件の支援事業を実施した。車両の整備や修繕法の手ほどき、サイバーセキュリティーに関する指導などで、ラオス軍の指揮官たちが来日して陸自施設学校(茨城県)で道路復旧の工程管理や重機の使い方を学ぶものもあった。

 だが、新型コロナの猛威で状況は一変した。20年4月以降は、ミャンマーで18年度から続く日本語教育支援を除き、予定されていた支援事業の延期が繰り返された。

 こうしたなか防衛省はカンボジアと対応を協議し、初めてのオンラインによる支援事業を今年2月1~5日に実施した。京都市とプノンペンをテレビ会議システムでつなぎ、陸自中部方面隊の教官5人がカンボジア軍将校5人に道路整備の測量技術について講義した。陸自によると、教官たちは通訳を介した授業の予行練習を繰り返した上で、受講者の理解度に応じて柔軟にカリキュラムを変更しながら進めた。受講者は積極的に質問し、授業時間の延長を望む声も上がったという。陸自幹部は「コロナによる制約を前向きにとらえ、チャレンジしていくことが大切」と受け止める。

 防衛省は3月にもオンラインで支援事業を行いたいと、別の支援対象国と調整を重ねる。受講者たちが画面の前で密集しないよう、少人数ごとの開催も検討する。担当者は「通信回線が整っていれば講義はオンラインで可能だが、自衛隊の施設や機材を見てもらいながら質疑するのは難しい。再開したとはいえ、感染対策や、どのような方法で効果的に実施していくのかは手探りの状態」と話した。