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日本経済新聞 2019/5/15
政府がミサイル防衛(MD)の要と位置づける陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の国内配備が遅れる可能性が強まってきた。2023年度の運用開始を目指してきたが、搭載レーダーの開発に5年程度かかる。米側が日本に求める費用負担も火種になりつつある。配備計画の誤算はMDに悪影響を与えかねない
北朝鮮は4、9両日に、飛翔(ひしょう)体を日本海に向けて発射した。9日分は短距離弾道ミサイルと判明し、17年11月以来の発射となった。政府は弾道ミサイルの飛距離が伸びることを想定して警戒感を高める。ロシアや中国も音速の5倍以上で飛行する極超音速ミサイルを開発している。安全保障環境が厳しさを増す日本にとってMDの強化は喫緊の課題だ。
イージス・アショアはイージス艦の弾道ミサイル迎撃システムを陸上に配備する。政府は17年12月に2基導入を閣議決定した。新屋演習場(秋田市)とむつみ演習場(山口県萩市、阿武町)に配備し、陸上自衛隊が運用する。4月26日には本体購入費の一部として約1399億円を支払う契約を米政府と交わした。
日本のMDは海上自衛隊のイージス艦と、航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)で構成する。これにイージス・アショアを配備して陸海空3自衛隊が一体でMDにあたる態勢になる。岩屋毅防衛相は「一日も早い運用開始が望ましい」と話す。
防衛省は18年度中にイージス・アショアの開発に着手し、23年度に運用を始めるとしていた。その目算が狂いつつある。
イージス・アショアに搭載する新型レーダーの開発が遅れている。防衛省が米ロッキード・マーチン社製「SSR」の採用を決めたのは18年7月。SSRの製造期間は19年から約5年間と見込む。性能確認や設置作業などを考慮すれば、運用開始は24年度以降になる。
SSRの開発費用の分担も日米の調整が続く。米政府は試験施設の建設やミサイル迎撃実験の費用の一部負担を求めている。岩屋氏は3月の国会答弁で「費用負担が生じる場合は、全体コストを縮減する交渉を行っていきたい」とした。
イージス・アショア購入契約は米政府の提示額や納期を日本側が受け入れる「対外有償軍事援助(FMS)」に基づくものだ。だがその調整が難航すれば、運用開始時期に響く可能性がある。
配備計画の遅れを受け、SSR開発に日本企業は参画できなかった。当初はレーダー性能を高めるため富士通の窒化ガリウム半導体の採用も想定していた。政府関係者によると、富士通が開発に加わると納期が8カ月以上延びるおそれがあるとみて、防衛装備庁が参画は困難と判断した。 |