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2019/1/10 2:00日本経済新聞
日本政府が米国、英国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド(NZ)で機密情報を共有する5カ国の枠組み「ファイブ・アイズ(Five Eyes)」との関係を深めている。アジア・太平洋地域では中国が軍事力と情報収集の強化を進めており、日米同盟だけでなく、より幅広い連携が必要になっているためだ。
欧州出張中の安倍晋三首相は10日から英国入りし、メイ首相と会談する。日英首脳は中国を念頭に置いた「自由で開かれたインド太平洋構想」の連携を進めることで一致する見通し。英国はファイブ・アイズの本家本元だ。
■共同演習に参加
メイ政権はファイブ・アイズの5カ国以外に、日本のパスポートを持つ18歳以上についても今夏までに自動ゲートを通って入国できるようにする。顔認証技術で本人確認している英国人や欧州連合(EU)市民らと同じ扱いになる。
外務省幹部は「ファイブ・アイズとは日ごろから情報交換をしている」と話す。
昨年10月、米空軍宇宙コマンドが主催した多国間机上演習「シュリーバー・ウォーゲーム」に日本の外務省、防衛省、内閣衛星情報センター、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が招かれた。米国の宇宙通信システムが攻撃を受けた際、日本などの衛星システムで米軍をどのように支援できるのかをシミュレーションした。
2001年から12回目となる同演習はこれまでファイブ・アイズの5カ国が中心になってきた。日本の参加は初めてだった。
■対北朝鮮でも
北朝鮮が公海上で船を横付けして積み荷を移し替える「瀬取り」対策でも協力を深めている。
主に警戒・監視にあたったのは米国やオーストラリア、カナダ、NZの航空機。英海軍の艦艇も東シナ海をまわった。実質的にファイブ・アイズの国々が活動していた。日本は瀬取りの現場写真を撮影し、各国に提供した。
デジタル、情報通信の分野での日本とファイブ・アイズの共同歩調は注目される。
ファイブ・アイズの5カ国は昨年12月、中国を拠点に活動するハッカー集団「APT10」が知的財産の窃盗を狙ったとして非難声明を出した。米国はAPT10が中国国家安全省の影響下にあるとみている。このとき日本外務省はすぐに「断固非難する」との外務報道官談話を発表し、足並みをそろえた。
日本政府関係者は「自衛隊が日本海や東シナ海で集める中国軍の情報への関心は非常に高い」と語る。データの分野でも急成長を遂げた中国への警戒感を、米欧と日本は共有している。
8日、安倍首相はカナダの求めに応じ、トルドー首相と電話協議し、中国でのカナダ人拘束問題などを巡って意見交換した。ファイブ・アイズの5カ国にとっても日本との協力関係が重要になっている。
政府が昨年12月18日に決めた新たな防衛計画の大綱(防衛大綱)では宇宙やサイバー、電磁波を扱う電子戦への対応が柱になった。ファイブ・アイズも最重視している領域だ。関係強化は今後も続く。
▼ファイブ・アイズ
大英帝国と関係の深かったアングロサクソン系の英語圏の5カ国を指す。カナダ、豪、NZは今も同じ英連邦に加盟。5カ国はエシュロンと呼ばれる通信傍受網を使い、世界中で得た情報を共有している。英米の名前を冠した「UKUSA協定」を結び、通信や電波を傍受する施設を共同利用するとされる。
テロや軍事に関わる機密情報を集め、安全保障政策に生かす。主要7カ国(G7)や軍事同盟の北大西洋条約機構(NATO)に参加するドイツ、フランス、イタリアは入っていない。日本は米英豪と物品役務相互提供協定(ACSA)を結んでおり、仏加と署名を終えている。
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